

倉庫実行システムってなんだ? 倉庫デジタル化へのガイドライン
第4回:倉庫制御システム(WCS)とは?

前回までで、「WMS(倉庫管理システム)」と「WES(倉庫実行システム)」について解説しました。
WMSは在庫管理、WESは作業順序の最適化を担うシステムです。
今回のテーマである「WCS(Warehouse Control System/倉庫制御システム)」は、それらと異なり、自動化機器を制御する役割を持ちます。
では、WCSとは具体的にどのようなシステムなのでしょうか?
今回は、WCSの機能、WMS・WESとの違い、現場での活用事例について詳しく解説していきます。

第4章: WCSとは何か?
WCS(Warehouse Control System)とは、倉庫内の自動化機器を管理・制御するシステムです。具体的な制御対象としては、以下のような機器があります:
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コンベヤベルト
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自動倉庫(AS/RS)
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自動仕分けシステム
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自動搬送車(AGV/AMR)
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ピッキングロボット
WCSはこれらの機器を一元管理し、最適なタイミングで動作指示を出すことができます。
例えば、コンベヤで流れてくる商品をピッキングロボットが正確に受け取るタイミングを調整したり、自動倉庫から必要な商品を取り出してAGVが配送する順番を最適化する、といった具合です。
WMS・WES・WCSの違いとは?
WCSを理解するためには、WMS・WESとの違いを整理しておく必要があります。
以下にまとめました:
WMS(倉庫管理システム)
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主な目的:
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在庫管理・入出庫管理
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管理対象:
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在庫データ、作業指示
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機能:
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在庫の見える化、棚卸管理
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重点領域:
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データ管理、可視化
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WES(倉庫実行システム)
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主な目的:
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作業順序の最適化
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管理対象:
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作業順序、リソース割当
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機能:
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作業順序決定、進捗管理
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重点領域:
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作業効率化
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WCS(倉庫制御システム)
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主な目的:
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自動化機器の制御
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管理対象:
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コンベヤ、AGV、ロボット
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機能:
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機器間の動作タイミング調整
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重点領域:
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自動化・連携制御
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つまり、WMSがデータ管理、WESが作業指示、WCSが自動化制御という役割分担になっています。これにより、倉庫全体の最適化が実現できるのです。
WCS導入の目的:現場がどう変わるのか?
WCSを導入することで、現場の作業フローがどのように変わるのかを具体例で解説します。
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自動化機器の連携強化
WCSの最も大きな役割は、複数の自動化機器を連携させることです。
例えば:-
ピッキングロボットが商品を取るタイミングと、コンベヤがその商品を流すタイミングを調整
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自動倉庫(AS/RS)から商品が出庫される際、AGVが適切な位置に待機するよう指示
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コンベヤ上の複数商品を自動仕分け機で正確に分別する
これにより、機器間の動作がスムーズになり、無駄な待機時間が減少します。
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リアルタイム進捗監視
WCSは、現場の進捗状況をリアルタイムで監視し、異常があれば即座に対応指示を出すことができます。
例えば:-
コンベヤ上の商品が詰まっている場合、他の機器の動作を一時停止させる
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AGVが動線上で停止している場合、代替ルートを指示
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自動倉庫の棚卸作業が遅延している場合、優先的に再指示を送る
これにより、作業遅延や機器トラブルが迅速に解消されます。
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作業データの収集と分析
WCSは、各機器の稼働データを収集し、パフォーマンスの分析を行います。
例えば:-
各AGVの稼働率を可視化し、稼働の偏りを検出
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ロボットのピッキング精度やスピードを監視し、作業の効率化を図る
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コンベヤの稼働時間を集計し、メンテナンス計画の立案に活用
これにより、倉庫全体の稼働効率をデータに基づいて最適化できるようになります。
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タイの現場でのWCS導入について
タイの日系企業の中には、WCSを導入して自動化と作業効率化を両立させている企業もあります。
例えばこのような導入効果が報告されています。
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自動倉庫(AS/RS)とコンベヤシステムをWCSで連携
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入出庫作業が自動化され、従来の作業時間が短縮
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AGVの稼働タイミングが最適化され、出荷遅延が減少
WCSは、単なる自動化機器の制御に留まらず、機器間の連携強化や進捗監視の自動化においても効果を発揮しています。
いかがでしたでしょうか?第4回のまとめポイントは次の3つです。
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WCSは「自動化機器の制御」と「現場作業の同期化」を担うシステムである
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WMSは在庫管理、WESは作業指示、WCSは機器制御と役割が異なる
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タイ現場でも自動化機器の稼働最適化や進捗管理の効率化に効果を発揮する
次回は、「システム選定と統合のポイント」に焦点を当てます。
WMS・WES・WCSをそれぞれ導入する企業もあれば、全てを統合して導入する企業もあります。その点について、「どのシステムを選ぶべきか?」「統合時の注意点は?」といった視点から詳しく解説していきます。
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