倉庫実行システムってなんだ？ 倉庫デジタル化へのガイドライン
第5回：システム選定と統合のポイント
これまでの回で、倉庫デジタル化を進めるための3つの主要システム、WMS（倉庫管理システム）・WES（倉庫実行システム）・WCS（倉庫制御システム）について詳しく解説しました。
しかし、実際の現場では、これらをすべて一度に導入するわけではありません。
今回は、「どのシステムを優先して導入すべきか」「統合時に注意すべきポイント」を整理して解説します。
第5章: どのシステムから導入すべきか？
倉庫デジタル化を進める際、システム導入の順序は重要です。
企業の現場状況に応じて、適切な導入順序が異なります。
1. 在庫管理が整っていない場合：WMS
現場で以下のような課題がある場合は、まずWMSの導入が最優先です：
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在庫数が分からない／正確でない
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出庫ミスや在庫不足が頻発している
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入庫・出庫の記録が紙ベースで管理されている
WMSを導入することで以下を実現できます。
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在庫のリアルタイム可視化
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ピッキングリストの自動作成
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棚卸作業の効率化
倉庫デジタル化の第一歩として、在庫データの正確性を担保することが最優先です。
2. 作業の効率化が課題の場合：WES
在庫管理がある程度整っている場合、次に検討するのはWESの導入です：
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ピッキング作業にムダが多い
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作業者ごとに作業時間のバラつきが大きい
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出荷作業の優先順位が曖昧になっている
WESを導入することで以下を実現できます。
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出荷順序の最適化
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作業者ごとの進捗管理
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リソース割当の効率化
作業の流れを標準化し、効率化を図るフェーズで導入すべきシステムです。
3. 自動化機器が導入済みの場合：WCS
現場に自動化機器（コンベヤ、AGV、AS/RS）が既に導入されている場合は、WCSの導入が効果的です：
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AGVやロボットの稼働が最適化されていない
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各機器がバラバラに動作している
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出荷タイミングが不均一で、ボトルネックが発生している
WCSを導入することで以下を実現できます。
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コンベヤやAGVの稼働タイミングの最適化
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自動倉庫と出荷エリアの同期化
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異常発生時の自動リカバリー対応
自動化機器がある現場において、統合制御が鍵となります。
統合時の注意点
倉庫デジタル化の最終形は、WMS・WES・WCSを統合して運用する形です。
しかし、統合時にはいくつかの注意点があります。
1. データの一元管理
各システムのデータを別々に管理してしまうと、情報が分断され、逆に効率が悪化します。
例えば：
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WMSの在庫データとWESの作業進捗データが連携していない
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WCSの機器稼働データがWMSに反映されない
これを防ぐために、データ連携基盤（データレイクやAPI連携）を構築し、各システムのデータを一元管理す る設計が必要です。
2. 役割分担の明確化
WMS・WES・WCSの役割が曖昧になると、現場での運用混乱が発生します。
例えば：
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WMSが作業指示まで出してしまい、WESの指示と矛盾する
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WCSが機器制御を行うが、WESの指示とタイミングがずれる
これを防ぐために、各システムの役割を再定義し、担当者にも徹底的に教育する必要があります。
3. システムの拡張性を考慮する
初期導入時にはWMSのみ、次年度にWES、その後WCSを追加導入
こうした段階的な導入が現場にとって負担が少ない場合も多いです。
その際、初期のWMS導入段階からWESやWCSを見据えた設計を行うことが重要です。
例えば：
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WMSのデータ構造を拡張性のあるものにしておく
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WES導入時にシームレスにデータ連携できるようAPI設計を整備しておく
これにより、後から追加されるシステムの統合がスムーズに進むようになります。
いかがでしたでしょうか？第5回のまとめポイントは次の3つです。
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現場の課題に応じて「WMS→WES→WCS」の順で導入を検討する
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統合時にはデータ一元管理と役割分担の明確化が不可欠
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システム導入時から拡張性を意識した設計を行うことが成功のポイント
次回は最終回です。これまでの内容を振り返りつつ、「倉庫デジタル化で得られる5つの効果」を再整理します。
全体のポイントをまとめ、「倉庫DXのゴールとは何か？」についても言及していきます
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